マネーゲームには向かない


株を始めたのはいくつの時だろう。前の会社を辞める前だから、25才の時だったと思う。クリスチャンになる前の話し。3年経ったら退職金をもらって辞めてやろうと思っていたから、こつこつと給料とボーナスを財形貯蓄や證券会社の元本保証の金融商品にまわして貯めていた。世はバブル絶頂期で、皆がマネーゲームに夢中になっていた時代。信託銀行の5年もので8%近い金利が付いていたし、ジャンボという10年ものは10%もの金利があった。

元本保証の金融商品は堅実だった。財形と変わらない安心感がある。その上随分利益が出た。その他にもより短期で儲け幅の大きい金貯蓄を試してみたりもした。お金が増える喜びを覚える。それで調子に乗って、ついに株に手出した。より大きな儲け幅を探して今まで貯めて来たもの全てを注ぎこんだが、金融や経済についての知識が全くない素人なのに、今から思えば無謀としか言いようのない行動だった。

最初はどきどきしながら證券会社のカウンターに座って、説明を聞いていた。株の専門用語を使われても何を意味するか分からない。銀行と違って店内の雰囲気には怖いものがあった。一攫千金のチャンスを瞬時に見分ける緊張感が漂っている。最初に買ったのが一部上場の電気会社と二部上場前の商事会社。両方とも自分の意思ではなく、証券会社の窓口の女性に勧められるままに買っている。我が親はこういうことには全く手を出さないので、錬金術にかけては参考になる話は聞けないし、他に相談する相手もいなかった。四季報を買ってみたところで先が読めるわけもない。

この後すぐに何ら研究をした訳でもないのに機械会社の株を買った。窓口女性も難色を示していたが、100万を越す大きな金額だというのに、リスクなど考えもせずに気軽に買っている。それでも買ったばかりの時は、株価が徐々に上がり、定期的に株主配当もあった。

商事会社は上場を目指していたので、すぐに値が上がって売り抜けた。こんなに単純に儲かるものかという程、利息などは問題にならないくらいの金額が返って来た。これで完全にマネーゲームにはまってしまった。時代にはめられていったのかもしれない。

證券会社に出向く回数が増えた。窓口で次のお勧めはと聞くと運輸関係の株を勧めてくれた。商事会社を売った金額をそのままつぎ込んだ。今までの倍以上の金額だったが、マネーゲームが楽しくて仕方がなかったので何の心配もなかった。買った後実際値は上がった。

しかしここでバブルがはじけた。株価はみるみるうちに下がって行き、何処まで行くのかという程下がり続けて、価値の無いに等しいものになった。どうする事も出来なかった。

ここからが長かった。こつこつためたものが、1/10以下の価値しかなくなっている。預金と違って、自分の金でありながら引き出すことが出来ない。しかも期間限定の金融商品ではないので満期はなく、いつ返って来るか分からない。歯痒い気持ち。しかしこの時この金額が手元にあったら、息子も産まれることだしと、マンションに手を出していたかもしれない。今にして思えば億ションが当たり前に売り出されていた時代、ひどい物件を高額で買って後悔していたに違いない。

随分経って一度電気会社の株価が夏に急上昇したことがある。やっと買った時の金額を上回ったというのに、それを見逃してしまった。バブルがはじけて以来新聞の株式欄を見る習慣もなくなっていた故の失策。実に残念なことをした。株価は一瞬の花火が上がった後、急降下して行った。

しかしやっと今年、夏前から電気会社の株価がするすると上がって来た。前回の苦い経験があるので、夏に売り抜かないと、売り損じるという気持ちがある。最初は22年分の利息を儲けるつもりで売値を考えていた。しかし株価が1,000円を超えてから緊張して来た。WEBで株価を始終チェックする。とりあえず買った時の金額は超えた。しかしいつ下がるか分からないので、心配でしようがない。結局弱気な売り注文を出した。

結果売れたのだが、普通預金に預けておいた方がまだ良い利息がついた、というくらいの微々たる儲けにしかならなかった。悔しいのは売った後しばらく株価が上がり続けたこと。今でこそ1,000円を割っているが、最高値では売れなかった。素人の株売買なんてそんなものだ。それでも元本が戻って来ただけ良かった。

残っている株2銘柄の資産価値は2割を切る。これとは長い付き合いになりそうだ。株の売買は、片手間に出来るほど簡単な物ではなかった。もう二度と買うつもりはない。息子には絶対勧められない。勧められないものは良い物ではない。良い教訓として話して聞かせている。

マサイのように気の小さい素人が、小遣い稼ぎ程度の気持ちで気軽に手を出す世界ではなかったようだ。株を通して良い経済の勉強が出来たが、錬金術に夢中にさせるのもサタンの仕業に違いない。それに気付かせてもらえたことに、感謝。

ヨハネの手紙第一2:16,17
すべての世にあるもの、すなわち、肉の欲、目の欲、暮らし向きの自慢などは、御父から出たものではなく、この世から出たものだからです。
世と世の欲は滅び去ります。しかし、神のみこころを行なう者は、いつまでもながらえます。

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