落ち着け、マサイ


「落ち着け、よしや」息子は時々自分にこう言い聞かせている。親がそうしろと教えた訳ではないのだが、あわててあたふたしそうな時に、一旦冷静になってこう言えるのはすごいと思う。これでまず一息ついて、改めて事にあたっている。

あわてているとろくなことはない。時間に追われ ている時が特にそうだが、自分に余裕がなくなり、事は悪い方へ進む。自分に余裕がないから他人のことも受け入れられなくなる。それで最近は息子のまねをし て、「落ち着け、マサイ」と言い聞かせるようにしている。間違えた事をあわてて訂正してもまたミスをおかすことになるので、まずあせる心を落ち着かせるの が一番と考えるようにした。

こう言い聞かせるのは、仕事に追われて余裕がな くなる時が多い。あわてているものだから確認もゆっくり出来ずに、考えられないような間違いを起す。赤羽から浦和に向かうつもりで乗った電車が大宮まで止 まらなかった。会議に出かけて行ったら誰もいないので良く確認してみると、建物の名前は同じでも別の駅だった。あわてて駅まで走り、電車に乗って、着いた 後はタクシーでかけつけた。今日も飛び乗った電車が降りるはずの駅を止まらずに通過して行った。

こういうことは今までにない。その今までにない ことがひと月の間に3回続いたので、自分としてもショックである。全て相手があって約束をしている重要な仕事を伴うものだから、遅れる訳にはいかない。間 違えに気づいた時にはパニックを起しかけたが、主は自分を見失うほどの窮地からも救い出して下さる。その度に「主よ感謝します」と何度言ったことか。

何がこの落ち着かなくさせている原因かと考えて みる。携帯電話が一番の原因のようだ。これを持つようになってどこでも仕事が追いかけてくる。しかも要求されるのは迅速な対応と処理。時間や休日も構わず かかってくるので、持っているだけで仕事モードから離れられない。パソコンも便利になって今まで時間がかかっていたことが短時間で出来るようになったのは よいが、その分仕事量が増えた。歩きながら仕事をする、食べながら何かをするというように複数のことが同時に出来るようになった。ぼおっとする暇もない。 常に何かしている。あれもこれも頭の中で同時に考えているので、それが整理出来ずにイライラする事が多くなった。見えない何かに自分が支配されているよう に感じる時がある。

マサイは電車の中、仕事での面談中、会議中は絶 対携帯電話に出ない。用件があれば留守録に吹きこんでくれるだろうと思うし、そんな状況では詳しい仕事の話は出来ない。しかしかかってくれば気になる。電 車を降りたらすぐにかけ直さなければ、と気にしながら電車に乗っていると落ち着かない。あの人からかな、どんな用件かな、とそれに付随する事柄も考えるよ うになる。するとあれもこれもすぐにしなければいけなく思えてくる。頭がその処理にむけて高速回転を始める。気がせいているので、歩きながら携帯をいじっ ていると他の人にかけてしまったりする。そういう時に「落ち着け、マサイ」と言い聞かせて立ち止まる。急いでいる時こそ落ち着いて冷静になることが必要で ある。

昔中学の時に習ったstopを使った英熟語に、 〜するために立ち止まる、〜することをやめる、というのがあった。今必要なのは、考える為に立ち止まる事であり、移動しながらあわてて対処しようとする事 をやめることである。別に1時間も立ち止まる訳でもないし、少しくらい立ち止まったところで大きなしわ寄せが来る訳でもない。

「落ち着け、マサイ」と自分に言ってほっと息を 吐くと、少し落ち着くことに気がついた。自分がからめとられているこんがらかった糸から解放されて冷静になれる。改めてゆっくりやり直した方が間違えるこ ともないし、却って仕事が早く片付く。何もあせって急ぐことはないのだ。息子に良いことを教わった。

伝道者の書10:4
支配者があなたに向かって立腹しても、あなたはその場を離れてはならない。冷静は大きな罪を犯さないようにするから。

箴言17:27
心の冷静な人は英知のある者。


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