「東方の三博士が見たもの」


細君とモロッコへ行って来た。正式にはモロッコ王国。民主社会立憲君主国である。エジプト、ケニヤに次いで3度目のアフリカ大陸旅行。勤続30周年でもらった有給休暇7日間を使って12年ぶりの海外旅行である。ツアーコンダクターであった細君はたいがいの国は仕事で行ったことがあるので、細君が行ったことがない国を選んだ。
 イスタンブールまで12時間40分。乗り換えてカサブランカまで4時間5分。到着後は、時計回りに国内を一周した。青い街、迷宮のような中世そのままの古都、アトラス山脈、サハラ砂漠、活気あふれた巨大なスーク、などこの国はいろいろな面があって実に面白い。マラケシュでは、11月だというのに気温は30℃近くになった。世界遺産を4つ訪ねた。異文化に身を置くと、珍しくて興味深いことばかりだ。移動中インフラ整備をあちこちで行っているのを見た。この国はこれから急速に発展して行くのだろう。
一番感動したのがサハラ砂漠。マサイは昔から何もない世界に感動する。神様が作ったままの自然には圧倒されるほどの力がある。真っ暗なうちに4WDでホテルから60km離れたメルズーガへ。まだ夜が明けていない、眠っている街を走るのは、異次元の世界へ向かうような印象がある。真っ暗な道をひた走り、標識もないところで道路から左へそれて未舗装の道なき道を行く。やがてサハラ砂漠の砂丘が見えて来た。ここがその西の端。北へ向かうとアルジェリアだ。キャラバン隊の基地のようなところに着いた。闇の中で駱駝が待っている。
まだ星がきれいに見える。スークで買ったターバンを頭に巻いて、ひとこぶ駱駝に乗る。砂漠の民、ベルベル人が先導してくれた。5騎縦に連なって曳かれて行く。駱駝初騎乗の細君は気に入ったようで、ずっと乗っていたいという。暗い中、足を引きずるように歩く駱駝で砂丘を上がる。「月の砂漠を、はるばると、旅の駱駝が行きました〜」という歌詞通りの情景であった。
ある程度まで行ってからは、小丘を徒歩で登る。砂浜より足をとられる。茶色い砂を手に取ると、とても細かくさらさらしていて、冷たい。驚いたことに、一帯音がしない。静寂があたりを支配している。鳥の泣き声すら聞こえない。砂漠が音を吸い込んでいる。音が切り取られてしまった、という不思議な印象。これには驚いた。人の手が加えられていない創世記の時代そのままの風景が目前に広がっている。日の出前の砂漠の空気は清澄で、神聖な気持ちになれた。
徐々に周りが明るくなってくる。遠くの砂丘がシルエットになり、その向こうから太陽が昇り始めた。天気も良く、見事な日の出だった。神様が創られた自然には人を感動させる力があると実感できた。帰りも駱駝に乗ったが、今度は日の出が作り出す我々の影が砂漠に映し出されて、一緒に移動して行くのを楽しめた。

マタイの福音書
2:1 イエスが、ヘロデ王の時代に、ユダヤのベツレヘムでお生まれになったとき、見よ、東方の博士たちがエルサレムにやって来て、こう言った。
2:2 「ユダヤ人の王としてお生まれになった方はどこにおいでになりますか。私たちは、東のほうでその方の星を見たので、拝みにまいりました。」

2:9 彼らは王の言ったことを聞いて出かけた。すると、見よ、東方で見た星が彼らを先導し、ついに幼子のおられる所まで進んで行き、その上にとどまった。
2:10 その星を見て、彼らはこの上もなく喜んだ。
2:11 そしてその家に入って、母マリヤとともにおられる幼子を見、ひれ伏して拝んだ。そして、宝の箱をあけて、黄金、乳香、没薬を贈り物としてささげた。

砂漠で聖書の東方の三博士を思い出した。博士たち一行が砂漠で駱駝の手綱をひいたキャラバン隊のように描かれた絵を良く見る。当時こんな感じで東方の三博士は駱駝に揺られながら星を追って来たのかな、と勝手に考えていた。
彼らは待ち望んでいた方の誕生を知らされた。そしてその方に会いに、星に導かれるままにやってきた。その方とは、初めにあった方であり、神とともにあり、神であった方、初めに神とともにおられ、すべてのものは、この方によって造られ、造られたもので、この方によらずにできたものは一つもない、その方にいのちがあり、このいのちは人の光であった、という方。その方が人となってこの世に誕生した。
その誕生を知らされたのである。東方の三博士は興奮して急いで星を追ったのだろう。駱駝に揺られながら、ここでこのまま星に導かれて生まれたばかりのイエス様に会いに行けるような気がした。とにかく砂漠は見渡す限り何にもないので、あの時代と同じ風景を見ていると考えても間違いではないように思える。三博士になったつもりで、明るくなってきた360度の地平線を見渡しながら感動に包まれていた。

ルカの福音書
2:11 きょうダビデの町で、あなたがたのために、救い主がお生まれになりました。この方こそ主キリストです。