「歯欠けた」


水曜日の帰宅途中、電車の中で息子からラインを受け取った。
「バイト中歯欠けた」
突然のことなので、一瞬何が何だか分からない。状況説明が全くなく、結果だけを知らされて驚く。息子は寮のそばの大手宅配業者の支店で荷物の仕分けのアルバイトをしている。そこで何かあったらしい。
「労災のきく歯医に行ってくれって言われた」「前歯欠けた」「痛みはない」
とラインは続く。その後、どれだけ欠けたのかを写真で送ってきた。前歯の1本右下が扇型に欠けている。永久歯だから当然もう元には戻らない。
マサイは小学校5年生の時、プール掃除をしていて、ふざけて同じクラスの男子が振り回してきたバケツが前歯に直接当たって欠けたことがある。前歯の歯並びが悪くて丁度矯正を終えたところでそうなった。健康な歯だったが、根元だけ残して切り取り、根に穴をあけて差し歯にした。後ろ側が銀なので、それが透けて色味は悪い。さしたものが一度ずれて来たので削ったり、調整したり、何度も歯医者に通った。後に歯茎に当たる部分に隙間があいて来て、歯茎の色が濃く悪くなってきた。差し歯も一生ものではない。44歳になって差し替えることになった。綺麗になったが、お金もかかった。前歯は飾りだと思ってください、お煎餅、リンゴ、ランスパンを前歯で噛み千切るのは禁止、と言われてもう10年以上たったが、今でも気を使う。
ということがあったので息子には綺麗な歯のままでいてほしかった。子どもの頃から食後丹念に歯を磨く習慣を付けたので今まで虫歯もない。残念な気持ちが大きい。
状況を聞くと、宅配便のトラックに荷物を積み込んでいた時にトラックからパレットの支えが落ちて来て直接歯に当たった。支えは鉄パイプだった。唇が切れたり顔に当たったりせずに歯にだけあたった。立派な事故だ。支店長には伝えたという。21時過ぎまでラインのやり取りは続く
被害者が20才を過ぎているからか、翌日になっても家族にはこの事故についてアルバイト先から何の連絡も来ない。お詫びや状況の説明の連絡があってしかるべきだと思うのだが、全く何の対応もない。今回の事故がひどいものでなかったことを感謝し、祈ってから、細君に支店に行ってもらう。ここの責任者である支店長が出てきたというが、「書類を本社に回して作成するので後のことはこちらでは分からない」という全く先に進めない返事であった。細君はこの人と話しても無駄だと思ったという。大手の支店といっても、労災関係の指示や判断をできる人がいなくて、本社との取次的なことしかできないのが現状らしい。だから責任者に話しても、糠に釘だったという。生涯残る傷を負わされたので、本来なら損害賠償ものだと思うのだが、こちらも初めてのことなので、何をどうしたらよいか分からない。
息子の寮から一番近い労災指定病院を見つけて予約をする。土曜日に歯科医院へ。重要なことをちゃんと聞いてこないといけないので、最初だけは細君に一緒に行ってもらう。良い先生だったというが、病院は当然のことながら、労災の範囲内でやるのか、範囲を超えるとどうなるのかという一般的なことしか言えない。神経は大丈夫だったので、治療方法は2つ。今回欠けた所をプラスチックで補う。これは将来取れる可能性もある。当然マサイが言われたようにお煎餅、リンゴ、フランスパンを前歯で噛み千切るのは禁止。もうひとつは残った歯を削って、上からかぶせるもの。8万、10万、12万コースとある。労災で出来るのは8万まで。8万コースはプラスチック、10万は裏が金属、12万はセラミックスになるが、オーバーした分は自己負担だという。本来なら損害賠償ものだと思っているので、自己負担も何もないものだが、どの治療法にするかを次の予約を入れた月曜日までに決めなければいけない。駅前で夕食を一緒にとりながらゆっくり話す。
間近で見ると、確かに欠けている。欠けていなくてもこういう前歯の形をした人を見たことがある。気になるといえば気になるが、残った割合から見て、かぶせるために健康な歯全体を削って小さくするのはもったいないように思える。プラスチックでこの扇形の面積を埋めたとして、常に取れてしまう可能性は今後持ち続けることになる。しかし当の本人は何にも気にしていない。早朝リンゴをかじってトレーニング出かけていたのができなくなる、というくらいしか問題にならないらしい。
それ以外にも学校のことや、最近あみだしたトレーニング方法、昨年からマサイと夢中になっているデニムのことなど、いろいろ話をしていて、鉄パイプが顔に当たって、傷が残るとか、唇裂傷とか、よりひどいことにならなかったのは、主が守って下さったのだと感謝する。マサイは、毎朝息子や細君が、事件、事故、サタンの攻撃や誘惑に遭うことなく、病気、怪我からお守りくださいと祈っている。そして守ってくださる主からは大きな安心もいただいている。これからの治療法やバイト先の対応については、主に祈って委ねることにする。よろしくお願いします。


詩篇
34:1 私はあらゆる時に【主】をほめたたえる。私の口には、いつも、主への賛美がある。
34:2 私のたましいは【主】を誇る。貧しい者はそれを聞いて喜ぶ。
34:3 私とともに【主】をほめよ。共に、御名をあがめよう。
34:4 私が【主】を求めると、主は答えてくださった。私をすべての恐怖から救い出してくださった。
34:5 彼らが主を仰ぎ見ると、彼らは輝いた。「彼らの顔をはずかしめないでください。」
34:6 この悩む者が呼ばわったとき、【主】は聞かれた。こうして、主はすべての苦しみから彼を救われた。
34:7 【主】の使いは主を恐れる者の回りに陣を張り、彼らを助け出される。
34:8 【主】のすばらしさを味わい、これを見つめよ。幸いなことよ。彼に身を避ける者は。
34:9 【主】を恐れよ。その聖徒たちよ。彼を恐れる者には乏しいことはないからだ。