「訪問する喜びとされる喜び」


夏休みに3泊4日の四国旅行を計画していた。いつものように息子の試合のついでの旅行ではなく、何年ぶりかの純粋な旅行で、細君もいろいろ調べて実に綿密な計画を立ててくれた。今まで読んできた司馬遼太郎の世界を巡る予定であり、坂本龍馬や長宗我部元親、坂の上の雲の秋山兄弟、正岡子規を育て上げたのはどういう地であるかを見に行く予定であった。松山は3回目だが、高知は初めて。細君は両地共初めて。
いよいよ出発間近というところで、台風が四国に近づいてきた。しかも2つ。台風12号の後を追うように11号が来ている。12号は何とか旅行前に通り過ぎてくれそうだ。当初11号は日本に近づかないという予報だった。しかし今年は例年と雲の動きが違う。だいたい台風の被害を受けるのはお盆過ぎで、8月の頭に日本列島に近づく台風はないものと思ってここに予定を入れていたのだが、異常気象である、何がいつ起こるか分らない。
この2つの台風の影響で、四国は記録的な豪雨に見舞われている。高知県は例年8月の降水量の何倍もの雨が1日に降っている。旅行2日前のTVニュースでは、大粒の雨が勢いよく降り、市内の川が氾濫した様子を報じている。崖崩れの心配もある。週間予報では、旅行中ずっと雨になりそうだ。高知市内でも避難勧告が出た。高知城のあたりでは集まった雨水が吹き出している場所がある。台風が来ればまず飛行機が飛ばなくなる。台風の動きを追っていると、最終日に利用する松山空港が、見事に進路にぶつかる。
夜10時過ぎに、マサイの父親から電話がかかってきた。本当に行くのかという。ニュースで台風情報をずっと見ていたのだろう。いつ「行くのはやめた」という電話がかかってくるかと思って待っていたのだが来ないので電話をした、という。この時点では行くつもりだったので、そう告げると、とても心配そうな、残念そうな調子で、そうか、という。電話を切った後、テレビをつけると、ここへ遊びに行くというのは失礼なように思える映像だった。住民が避難をしている時に観光に行くのである。この雨は止むのだろうか。ひとつ台風12号が行き過ぎて行くところだが、すぐ後にまた同じくらいの勢力を持った台風11号が確実に四国に向かっている。
高知から愛媛へバスで抜けていく計画なのだが、旅行中間違いなく毎日雨だろう。まず細君と祈った。この旅行についても祈って決めて、予約後も毎日旅の安全を祈り続けてきた。何か行かない方が良いという神様のメッセージなのかもしれない。今日キャンセルをすれば、30%のキャンセル料で済むが、明日になると40%になる。思案のしどころである。現地のホテルに電話を入れてみる。飛行機以外の市内の交通は全て止まっているという。こういう状況だから、キャンセルについてはキャンセル料を取らないとまで言ってくれた。市内観光は出来ないことはないが、傘をさして歩くには辛そうな雨の勢いだ。せっかく新鮮な海の幸でも食べに行くつもりでいたのだが、これでは到底漁に出る船もないだろう。食べ物屋さんも店を締めているかもしれない。と、いろいろ考える。
行けばよかったと後で後悔しないようにして下さいと祈って、WEB申し込み画面のキャンセルボタンを押す。楽しみにしていた細君にはかわいそうなことをしてしまった。実家にキャンセルとしたという電話を入れると、父親が嬉しそうな声で答えてくれた。安心したようだ。こと命に関わるような事故の可能性がなくなったことに対しての安堵だろう。
旅行前日になっても現地の台風と雨の状況は変わらない。避難勧告は避難指示になった。「避難勧告」は避難を強制するものではない。それに対して緊急性が高く、強制力が強いのが「避難指示」。人的被害が出る危険性が非常に高まった場合や人的被害が発生した場合に発令されるもので、避難指示が出た場合は直ちに避難する必要がある。気象情報のサイトを見ていると、高知県からこの避難指示がずっと消えない。
皮肉なことに、東京は良い天気で暑くてたまらない。旅行後に行こうと思っていた実家への訪問を早める。父母を近所の巨大ショッピングセンターに車で連れて行って、一緒に食事をする。何がいいかと聞くと肉が食べたいと母が言う。ボケ防止に肉料理が良いというのをTV番組で見たようだ。80歳にステーキはどうかと思って、中華料理店に入って、肉料理を中心にいろいろ注文して4人で分けて食べる。母はみんなで取り分けて数種食べられるのがとても気に入ったようだ。
スーパーで買い物を一緒にして車で持ち帰る。普段はこのショッピングセンターまでバスと電車を乗り継いで来ているという。車なら1本道で、あっという間に着く。母は家でもずっと細君を捕まえて喋っていた。これも楽しかったらしい。ゆっくり話せて良かったと喜んでいた。父は少し年をとったように感じた。母は杖をついている。翌週には行く予定だった実家だが、この時行っておいて良かった。
この昼食の前にマサイが買ったバッグを、取り立てて見せびらかしたわけではないのだが、便利そうだから欲しくなった、どの店で買ったのか、という。教えてやると、翌週2人で買いに行った。気に入ったのが買えた、と嬉しそうなメールが来た。我々の訪問が余程嬉しかったらしい。喜んでもらえてこちらも嬉しい。
翌週金曜日、息子がいきなり明日夕ご飯を食べに帰ってよいかという。母親の手料理の中でも大好きなものをリクエストしていた。実に4月1日に入寮して以来の初帰宅である。世の中は夏休みとは言え、強化トレーニングの最中なので、9月の日本学生選手権が終わるまでまとまった休みはない。練習の日程表を部屋に貼ってあるので、細君とそれを見ながら、今頃は朝練が終わる頃かとか、もう夕練に出かけたか、もう寝たか、ちゃんと食べているか、など息子の行動に思いを馳せている。息子が話題に登らない日はない。
土曜日夕方ミニバイクで帰ってきた。さっき出かけた先から帰ってきたような、いつも通りの帰宅だった。毎日の練習で日焼けしている。随分からだが絞まったようだ。腹筋が板チョコのように綺麗に割れている。食前に3人で手をつないで祈り、食べながらいろいろ話が出来た。楽しく元気にやっているようだ。安心する。
門限があるので、食べ終わって風呂に入ると、食材をいろいろ持って急いで戻って行った。わずかな時間だったが、実に楽しい時間だった。わずかな時間でも帰って来てくれれば親としてはとても嬉しい。すっかり2人暮らしに慣れてしまっていたが、我が家は3人家族なのだと実感できたひと時であった。
 訪問する喜びとされる喜びの両方を味わえた夏休み、実家や我が家の親としての喜びを通して、我々のどんな行動が、天の父、神様に喜んでもらえるのか、を合わせて考える事が出来た有意義な時間になった。全てのことを働かせて益としてくださる主に感謝します。

詩篇 55:22 あなたの重荷を【主】にゆだねよ。主は、あなたのことを心配してくださる。主は決して、正しい者がゆるがされるようにはなさらない。

箴言
23:19 わが子よ。よく聞いて、知恵を得、あなたの心に、まっすぐ道を歩ませよ。
23:20 大酒飲みや、肉をむさぼり食う者と交わるな。
23:21 大酒飲みとむさぼり食う者とは貧しくなり、惰眠をむさぼる者は、ぼろをまとうようになるからだ。
23:22 あなたを生んだ父の言うことを聞け。あなたの年老いた母をさげすんではならない。
23:23 真理を買え。それを売ってはならない。知恵と訓戒と悟りも。
23:24 正しい者の父は大いに楽しみ、知恵のある子を生んだ者はその子を喜ぶ。
23:25 あなたの父と母を喜ばせ、あなたを産んだ母を楽しませよ。
23:26 わが子よ。あなたの心をわたしに向けよ。あなたの目は、わたしの道を見守れ。