「いよいよ独立」


高校の卒業式が終わってゆっくりする間もなく、大学で始まる寮生活の準備になった。以前大学の水泳部監督を訪ねた時に、水泳部は(他の運動部もそうだが)、どんなに近くに自宅があっても寮生活をするのが条件だと言われていた。しかし合格通知を受け取った後、ただ待つばかりで、なかなか入寮についての案内が来ない。水泳部のホームページなどからだいたいの場所を推察して細君と下見に行ってみたりしたのだが、部屋の中をのぞけるわけでもなく、部屋の間取りも、何が必要かも分らないので、何を揃えたらよいか分らない。それで親は気分がせいている。
他の大学は随分早くから新入生を寮に受け入れているようで、3月に入ると今日はあそこの大学の入寮日だとか、あの人はいつ入寮だとか聞く。もう大学での練習が始まっていると聞くたびに、我が息子の予定が立たないのが心配になってくる。引越しは業者を頼まずに自分たちでやるつもりなのだが、消費増税前の駆け込み需要で、家電品が品薄になっているし、配送トラックも足りないくらいだというニュースにもあおられている。
大学の監督から電話でユニフォームのサイズを聞いてきた時に、不動産屋さんから連絡が行くからそれを聞いて話を進めておくようにということを聞いてひとまずホッとする。とりあえず待っていて良いのだなという安心感が出来たが、その電話のあと一向に連絡が来ない。
3月2週目の土曜日、待ちきれずに一人暮らしグッズの買い出しに行く。先輩に聞いて最低限必要なものは分かっている。洗濯機、冷蔵庫、電子レンジ。これだけは最低あった方が良いというものは何ですか、という問いかけに返って来た答えがこの3つ。親としてはその洗濯機をベランダに置くのか、部屋の中に置けるのか、間取りは、収納は、いつになったら入れるのか、先輩が残して行ってくれるものはないのか、などなど聞きたいことはたくさんあったのだが、情報はここまで。配送先は後で連絡をすることにして、必要なものを買い出し、持ち帰れるものは家に持ち帰ることにする。
布団や台所用品など細々としたものを買って帰ってきたら、ポストに入寮案内の封書が届いていた。寮と言っても、合宿所形式のものではなく、民間アパートを一括して借り上げたような方式になっているらしい。それぞれ独立した部屋に入るので、自炊である。鉄筋コンクリート3階建ての6畳ワンルームだ。
息子は一人暮らしを始める前に、細君から最低限の料理を習うことになった。高校の授業で習ったものはあるようだが、皆で作るのと、自分ひとりで作るのは違う。第一弾が具だくさん味噌汁。第二弾は電子レンジで簡単に作れる料理ということで、鳥の胸肉を使った料理、鶏肉の甘辛煮、第三弾はコンナムルプルコギ。第四弾はポークカレー。第五弾は大好きな麻婆豆腐。大きな体でかがむようにして包丁を使っている姿がとても頼もしい。料理は嫌いではないらしい。
新潟で合宿中の先輩から入学式当日の動きについての案内が来たり、シリコンキャップのサイズを聞く電話が入ったりするようになる。主将から4月からの部費を振り込むようにという案内の封書が来る。話がどんどん進むようになった。
大学へは勉強をしに行くので、TVは買わないというのがマサイの方針。その代わりに授業で使うのにパソコンは必要だろうと思って買いに行ったら、消費増税前と、ウィンドウズXPのサポート終了にともなう買い替えが重なって売れ行きが良すぎるらしい。買えなかったが、3人揃って楽しい買い物の時間をもてた。新しいものばかり欲しがるわけでもなく、定期入れはマサイのお古で良いという。他にもマサイのお古を気に入って使ってくれている。
買い足していく生活用品と、持っていくものを仕分けしているので、家の中でカニ歩きしなければならなくなった。旅立っていく息子と一緒にいられるのもあとわずかという寂しさを感じるのかと思ったら、引越しのことで頭がくるくる四六時中回転しているので、気が紛れてしまっているらしい。あれが必要だ、あれも持たせてやった方が良い、不足しているものは、などなど。車で30分強の場所への移動だし、試合があれば顔は見られるわけだし、大学の各運動部はフェイスブックやツイッターなどで日々の活動を紹介してくれているので、行動は分かるし、心配はない、寮から家の近所を通過して毎日学校へ行くのだから、用があれば帰ってこられると思っているので、今のところ寂しさを感じる暇はない。
 3月はあっという間に過ぎてゆく。最終の週末を引越しに当てる。金曜日、細君と息子で部屋の掃除。収納は大きいが、1年以上誰も住んでいなかったようだという。布団とか大き目のものを持って行ってくれた。洗濯機、冷蔵庫、レンジ、御釜など家電の配送を受け取り設置する。普段家の掃除などしたことがない息子だが、天井のすみずみまで綺麗にしてきた。
 土曜日、息子は6時半からスイミングクラブの朝練へ。これから大学での練習になるためクラブは休会となる。4歳の時から14年半通い続けたプールでの最後の練習だったが、昨日晩くまで起きて片付けていたので、辛そうに出かけて行った。
 車で数往復は覚悟していたが、一度で荷物は全て積めた。部屋へ運び込んで後、細々としたものの買い物へ。細君がいないと気づかないが、生活には必要なものばかり。細君を尊敬の目で見る。スーパーでは買い物のしかた教室。細君から野菜や果物の選び方を教わっていた。部屋の中はものが全部収まるところに落ち着いたので広く快適になった。聖書も棚に置いてある。
日曜日は雨。午後から片付け。早めに終わったので、3人でのんびりした時を過ごす。夕食を作るからと、帰る前に細君はその指導。ポン酢を使った肉野菜炒め。手際よくやっている。おいしそうに出来上がった。
部屋の中で3人手をつないで、寮生活や大学生活についての無事を祈る。毎日祈って、その結果として神様がここへ導いてくださったのだから、ここには何か神様の目的がある。それを信じて進んでいけば良い。イエス様よろしくお願いします。息子を一人残して帰宅。スマホで距離を測ると寮まで11.6kmだった。いつか走って行ってみようと思う。
 月曜日、明日の入学式は家から行くので息子は一旦帰ってきた。夜はマサイによるネクタイの結び方講座。今まで学ランだったので、ネクタイ結ぶのは初めて。折しもマサイの誕生日。細君と息子がカードをくれた。息子は「最近は体調が良くない日が多いみたいなので気を付けてください。大学ではたくさんの仲間とともに水泳、勉学、頑張ってきます。無理せず楽しい一年でありますように」と書いてくれた。こういうことが書けるようになったのかと感動する。入学式からは寮に直接帰るので、3人で過ごす夜はもうしばらくない。
ずっと3人手をつないで食事の前に祈ってきた。これからは手の間が11.6km離れてしまうが、毎日祈り続けることには変わりない。その間をイエス様がつないでいてくれるので安心し祈り続けていく。

マタイの福音書
18章20節 ふたりでも三人でも、わたしの名において集まる所には、わたしもその中にいるからです。」

ダニエル書
10:19 言った。「神に愛されている人よ。恐れるな。安心せよ。強くあれ。強くあれ。」彼が私にこう言ったとき、私は奮い立って言った。「わが主よ。お話しください。あなたは私を力づけてくださいましたから。」

ホセア書
6:3 私たちは、知ろう。【主】を知ることを切に追い求めよう。主は暁の光のように、確かに現れ、大雨のように、私たちのところに来、後の雨のように、地を潤される。」