あなたの名で呼ぶ


人の名前が出てこなくなったのはいつからのことだろう。思い出そうとすればするほど出てこない。頭の中に相手の姿ははっきりと思い浮かんでいるのに、名前だけが出てこない。思い出そうとすればするほど、肝心の名前は深遠なる淵に沈み込んでいく。一旦引っかかると絶対に出てこない。昔はしばらくたつとひょんな拍子に思い出したりしたものだが、今はほぼ出てこない。

昔父親が、よく一生懸命思い出そうとしているのを、冗談で言っているのかと思って聞いていた。ありえないことだと思っていたが、今は自分がそうなっている。50歳を過ぎたあたりから、その症状がひどくなった。名前の最初の文字は何となく思い浮かぶ。え〜と谷なんとかさんだ、谷川、谷内、谷村、谷町・・・どうにも正解にたどりつかない。結局矢野さんだったりする。本人を目の前にして思い出せない時はもっと困る。何とかごまかしながら話していて、別れた後、急いで名刺の束をひっくり返して探してみる。

WEBで調べてみると、人の名前が思い出せないという症状は、40歳を過ぎると出てくる人が多いらしい。その他のことは正常に出来ているのに、何で名前だけ、と思うのだが、これは年齢を重ねるうちに脳の神経細胞が減少するためで、誰にでも起こる「物忘れ」だと読んで一安心する。

しかし相手に対して失礼だということには変わりはない。逆に相手が名前を覚えていてくれていたりすると、とても嬉しい。特に目上の人が2度目に会った時に「マサイさんね」など、名前を頭につけて話してくれるのを聞いて、あぁ覚えていてくれたんだと感動したこともある。それだけでその人を尊敬する気持ちになる。その反対になるのだからそれは失礼だ。

イザヤ書 40:26
目を高く上げて、だれがこれらを創造したかを見よ。この方は、その万象を数えて呼び出し、一つ一つ、その名をもって、呼ばれる。この方は精力に満ち、その力は強い。一つももれるものはない。

物忘れには正常な物忘れと病的な物忘れがあるという。注意しなければならないのは病気による物忘れだという。ぼけたか、という程度なら笑って済まされるが、痴呆症、認知症、アルツハイマーとなったら大変だ。これは脳神経がダメージを受けて、通常より急激なスピードで記憶がなくなり、記憶に障害を起こす病気である。人間の脳は、年とともに神経細胞が減少したり、情報伝達機能が低下したりするらしい。人間の脳細胞140億個のうち、40歳を過ぎると、1日に5〜10万の脳細胞が死滅するという説もある。頭の中のメモリ容量がいっぱいになったので、新しいものを入れるために勝手に古いものを消去していると簡単に考えていたが、そうでもないらしい。

いろいろな症例を読んでいると、マサイの場合は正常な物忘れらしい。社会生活に支障をきたす心配はないという。その防止策は、脳を活性化したり、脳の血流を増やしたりすること。正常なものとはいえ、本人は随分不甲斐ない思いでいっぱいになっている。

名前だけではない。後でやろうと思い浮かんだ事は、たいてい思い出せなくなる。何かやろうと思っていたのだけど、何だっけということがよくある。これもいくら思い出そうとしても思い出せない。で、思いついた時に必ずメモをとるようにしている。この文章を書き終えたらメモしておこう、というのではもう間に合わない。思いついた時は、全てに優先してメモをとる。メモさえあれば安心なのだが、時には急いで書いた自分の字が読めなくて、結局何をしようとしていたか思い出せなかった事もある。実に不甲斐ない。

WEBには同じようなことを心配している人の書込みが多い。だがそれに対する診断は、少しは心配してくれよと言いたくなるほど冷たい。つまり、年のせい。しかしまだそのせいばかりにしたくない。大学4年生の時に教育実習先の中学校で、3年生4クラスの生徒全員分の名前を3日で覚えたという過去の栄光もある。脳の衰えに負けることなく、自分が名前を覚えていてもらった時に受けた感動を、今後は自分が与える側になりたいと思っている。秘訣があったら教えてください。

イザヤ書43:1
だが、今、ヤコブよ。あなたを造り出した方、【主】はこう仰せられる。イスラエルよ。あなたを形造った方、【主】はこう仰せられる。「恐れるな。わたしがあなたを贖ったのだ。わたしはあなたの名を呼んだ。あなたはわたしのもの。

イザヤ書45:3,4
わたしは秘められている財宝と、ひそかな所の隠された宝をあなたに与える。それは、わたしが【主】であり、あなたの名を呼ぶ者、イスラエルの神であることをあなたが知るためだ。
わたしのしもべヤコブ、わたしが選んだイスラエルのために、わたしはあなたをあなたの名で呼ぶ。あなたはわたしを知らないが、わたしはあなたに肩書を与える。

月刊マサイで引用している聖書本文は、新改訳聖書第三版(©新日本聖書刊行会)を使用しています。
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