スイムウェア


北京オリンピック以来、水着についてのニュースが多くなった。これは水泳界に限らず、一般の記事ネタにもなっている。我が家には水泳選手がいるので気になる話題である。

マサイの学生の頃は、競泳用の水着といえば三角形の面積が小さいものだった。我が息子が選手になって三角形のクラブ水着をはいて泳ぐ事になった時は喜んだものだ。それが時を経て腿まで覆うハーフスパッツ型を気に入ってはくようになった。去年7月、全中予選を見に行くと、速い子は足首まであるロングスパッツをはいている。それが格好良く見えた。中学3年生や、高校生がはくものというイメージがあったので、いつかは我が息子もあれをはくようになるのだろうなと憧れを持って見ていた。

ロングスパッツはハーフスパッツの倍の値段がついている。1万円を越すもので、水着といえども簡単には手が出ない。今まで水泳は野球やサッカーなど他競技と比べて用具代が余りかからなかった。それが北京オリンピックでS社のLRが注目を浴びてから様相が変わってきた。高速水着と言われるものの登場である。

この水着問題でオリンピックの競泳はいろいろ盛り上がった。実際オリンピックの決勝では、海外の選手もみな同じS社の水着でスタート台に並んでいた。選手をよそに水着ばかり注目されたので、「泳ぐのは僕だ」と選手たちが逆にアピールした。水着が速いのではない、水着を着た選手が注目されるべきだ。それは絶対間違いない。

今まで他競技は用具の開発により利用者であるアスリートが好結果を残して来たが、水泳界に関しては驚くほど大きな革新はなかった。だからこのLRの登場は画期的であった。しかし他社も負けてはいない。S社に対抗すべく各社の開発合戦が始まった。各社売り出すポイントは違っても、アスリートにとっては興味のあるものばかり。超軽量、体幹保持、骨盤安定、体のラインを整える、体型矯正、水の抵抗を少なくする、などなど、流体力学的に考えられた新商品ばかり。そして何よりこれを着ればタイムが伸びる、と言われている。着たから速くなったのか、着なくてもそのタイムは出たのかの検証は一般選手レベルでは残念ながら出来ない。

いろいろな機能をもったこれらの水着は随分高価である。しかし0.01秒を争う世界において、子どもに買ってやりたいと考える親も多いだろう。欧米では経済的な格差によりタイムが左右されるので、学生の着用する水着に関しての規定を求める声が新聞に載っていた。そんな記事を読みながらも、高速水着っていうのは日本の上位にランキングされるような人が着るのだろうな、とのんびり考えていた。ところが秋の県大会から高校生の中でLRを見かけるようになった。着る方も勇気がいるだろうなと考えながら見ていたが、S社に対抗すべく新商品を開発してきた他社の高速水着もいた。

問題は急速に身近な物になって来た。我が息子も今まで競技会ではクラブの水着で泳ぐように指導されてきたが、期間限定で自由に選んでもよいと解禁になった。ここから急に競技会で見かける水着が変わってきた。エントリー最終組では各社の高速水着が並ぶ。最初は高校生だった。すぐに中学生もはくようになった。年度の変わった今では小学生の10歳以下の部でも見かける。

親としては、まだまだ水着に頼っている年ではないだろう、そんなことより一生懸命トレーニングをしろ、とこの問題を一喝することは出来ない。毎年速くなって行く標準記録(各種目毎に設定されているタイムで、これを公認競技会で突破しないとその大会に出られない)へ向かってそれを着てタイムが縮まるならば、と藁をもすがる気持ちでいっぱいなのである。どの親も同じなのだろう、みるみるうちに高速水着の輪は広がっていった。一人で数種類持つ者もいる。この浸透の度合いはものすごいスピードである。

中には10回しか効果が持続しないという噂のある水着もある。今までになかったことだが、とても入らないと思うほどの小さな水着に「体を押し込む」ように着用する。2〜3人がかりで着せてもらう場合もある。体を締め付けるので長時間着ていられない。試合の直前に四苦八苦して着て、試合が終わるとその窮屈な中から火照った体を開放してあげる。

どうしたら良いかしばらく祈ってから、11月の大会に向けて我が息子にも買うことにした。LRという訳にはいかないので、同じS社のものを探す。1着が高価な上に、どこにでも売っているものではない。おまけに買いが殺到している時で、品切れ状態の店もあった。あちこち探し回ってやっと見つける。試着を頼んで、息子と二人、狭いフィッティングルームに入って汗だくになって着せて見た。

まず水着が足首を通過しない。次には腿から上がって行かない。ちょっとずつ生地をつまみながら上げていくが、爪で引っ掛けたらおしまいだ。着た後は屈伸をしない様にという注意書きのある商品もある。こんなことを競技会の日にしていたらエントリーに遅れてしまいそうだ。やっと入ったと思ったら、もうひとサイズ下の物がサイズ的には丁度良いものだった。

いよいよ息子もロングスパッツをはくようになったか、と喜んでいたが、以後はそれが当たり前になった。試合後に感想を聞くと、それなりの効果はあるらしい。1着という訳にはいかないので複数枚必要になる。素材もバイオラバーのものが登場してからまた水着が高価になった。男子は胸まで覆うロングジョンタイプも多くなって来たが、さすがにここまでは手が出ない。以前は競技会に必要な水着とゴーグルとキャップを新調してもたいした支出にはならなかった。それが高速水着、理想的な水流を生み出すシリコンキャップ、視界を広くクリアに保つゴーグル、とそれぞれが高価な買い物になってきた。

国際水泳連盟(FINA)は世界記録の公認はFINAが認可した水着を着用した場合に限ると発表した。水着については生地の厚みや浮揚力などを定めた現行規定に、素材の浸透性能の制限が加わった。FINAが主催する世界選手権や、オリンピックでは参加する全選手が同規定に適合した水着の着用を求められる。

これを受けて日本水泳連盟は、混乱を避けるため、本年度内は現行の水着規定を変更しないとしたが、2010年4月からは、日本水連並びに加盟団体が主催する競技会と公認競技会においてFINAの承認を得た水着を着用する、という規則を付け加えた。問題は全水泳選手に及んできた。また今月6月1日以後の日本記録については、FINAの承認を受けた水着を着用した記録を公認する、とした。

5月25日、FINAが承認した水着の一覧がWEBで発表になった。世界中のメーカー202の商品が英語で並ぶ。ざっと見ただけだが、よく目にする水着のいくつかはここに名前がない。幸い我が息子の持つ水着はここに入っていた。

高速水着を全員が着るという条件の元で「泳ぐのは僕だ」を競う原点に戻ったということか。しかし悪影響もある。高速水着によって皆のタイムが速くなる、すると翌年の大きな大会の標準記録が改定されて速くなる、より一生懸命トレーニングをする必要が出て来る、ますます休んでいられない。水着に首を締められたようなものだ。

2010年3月のジュニアオリンピックに出るための標準記録は、息子の狙う400m自由形で、今年の3月のものより2秒51も速くなった。1/100秒が明暗を分けるというのに随分一挙に上げてくれる。しかしこれを確実にクリアしていかないと出られない。ますます狭き門になる。それに立ち向かって行く息子も大変だ。

マサイの定額給付金はバイオラバー製の水着に化けた。細君に甘〜い親と言われるが、親としては出来るだけの事はしてやりたい。この水着の他に出来る事は栄養、休養の面でのサポートをすること。もう一つ出来る強力な事は、祈り支えること。これはまかせておきなさい。教会の皆も祈ってくれる。イエス様、よろしくお願いします。

マタイの福音書6:9〜13
だから、こう祈りなさい。『天にいます私たちの父よ。御名があがめられますように。
御国が来ますように。みこころが天で行なわれるように地でも行なわれますように。
私たちの日ごとの糧をきょうもお与えください。
私たちの負いめをお赦しください。私たちも、私たちに負いめのある人たちを赦しました。
私たちを試みに会わせないで、悪からお救いください。』〔国と力と栄えは、とこしえにあなたのものだからです。アーメン。〕

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